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売上予測とは?立て方や計算方法、精度を高めるポイントも解説


マーケティングを成功させるためには、マーケティング戦略立案に伴い、売上予測を立てておくことが必須です。
売上予測は、マーケティングを進める上での指標となる工程です。したがって、売上予測が不正確だと効果的なマーケティングを進められず、収益が上がらないどころか余計な手間やコストがかかってしまうことになりかねません。
そこで、本記事では、売上予測の基本的な計算方法を紹介した後、精度の高い売上予測をするためのコツや注意点を解説します。
売上予測のやり方について知りたい事業担当者の方は、ぜひご一読ください。

目次[非表示]

  1. 1.売上予測とは
  2. 2.売上予測と売上目標の違い
  3. 3.売上予測の重要性
  4. 4.売上予測の算出に必要な情報とは
  5. 5.売上予測の立て方と計算方法
    1. 5.1.過去の実績をもとに計算する方法
    2. 5.2.営業パイプラインから予測する方法
    3. 5.3.商談ステージに基づいて予測する方法
    4. 5.4.テスト市場の分析結果から予測する方法
    5. 5.5.定番の経験モデルや分析手法から予測する方法
  6. 6.売上予測の精度を高めるポイント
    1. 6.1.前提となる市場や販売方法を特定する
    2. 6.2.正確な販売実績データを収集する
    3. 6.3.影響を与える要因を把握する
    4. 6.4.社員1人ひとりがコスト意識を持つ
    5. 6.5.情報共有のしくみを整える
    6. 6.6.数か月先など長期的な売上予測を立てる
  7. 7.売上予測にはエリアマーケティングの知識が役立つ
  8. 8.エリアマーケティングならエリアインテグレーションにお任せください
  9. 9.まとめ


売上予測とは

売上予測とは、過去の売上データや自社の営業方法などの情報に基づき、将来における一定期間の売上を予測することです。
売上予測は、効果的なマーケティング戦略を立てる上で非常に重要です。できるだけ精度の高い売上予測をすることで、業務効率アップやコスト削減などにつながります。
精度の高い売上予測を立てるには、さまざまな項目における正確なデータを根拠として、客観的かつ多角的な視点からの分析が必要です。
また、基となるデータについても、自社の業種や扱う商品・サービスの売上予測に即したデータでなければなりません。
たとえば、スーパーやドラッグストアなどの場合は、周辺地域の人口や年齢層、よく利用される交通手段といったデータを参考に売上予測を立てます。


売上予測と売上目標の違い

売上予測と混同しやすい用語に「売上目標」があります。この2つの違いは、以下の通りです。
まず、売上予測は、過去の売上や営業に関する客観的なデータを基に算出されます。自社の目標を立てるのではなく、あくまでも客観的かつ正確な数値を算出することが重要です。
一方、売上目標は、目標を立てる側の主観面を重視している点が相違点です。つまり、売上目標とは、将来的に自社が達成したいと考えて設定される数値を表します。
目標を立てるにあたって過去の売上データなど客観的な数値を参考にすることはあっても、最終的には目標を立てる人の主観が反映される点で、売上予測とは異なります。


売上予測の重要性

売上予測は、マーケティング全体の方向性を定めるために必要不可欠です。そのため、できるだけ正確な売上予測を立てる必要があります。
売上予測が正しくできていないと、以下のような問題が生じやすくなります。

  • 在庫管理・・・在庫が足りなくなる、または在庫が余るなどの問題が生じる
  • 資金繰り・・・資金不足につながる危険性が高まる
  • 予算管理・・・広告費用や設備費用などの予算管理が難しかしくなる
  • 人員配置・・・人件費も予測が難しく、適切な人員配置計画ができない
  • 企業経営・・・過剰投資をし、資金不足に陥る危険性が高まる

こうした問題を防ぐためにも、売上予測をおろそかにしないよう心がけましょう。


売上予測の算出に必要な情報とは

売上予測を算出する際に必要な情報としては、主に以下が挙げられます。

  • 一定期間(1カ月、四半期など)における売上実績
  • 商品(サービス)別の売上実績
  • 来店客数、客単価
  • 商圏規模(人口、世帯数)
  • 成約率(CVR)
  • 商談期間
  • 現在の案件化数
  • 平均成長率

正確な売上予測のためには、データがたくさんあるに越したことはありませんが、あまり関連性がない情報を入れてしまうとかえって混乱が生じるおそれがあります。情報の取捨選択に気をつけましょう。


売上予測の立て方と計算方法

話し合いをしている様子

実際に売上予測を算出する方法として、代表的なものは以下の通りです。

  • 過去の実績をもとに計算する方法
  • 営業パイプラインから予測する方法
  • 商談ステージに基づいて予測する方法
  • テスト市場の分析結果から予測する方法
  • 定番の経験モデルや分析手法から予測する方法

以下では、上記4つの計算方法について詳しく解説します。精度の高い売上予測を立てるには、過去の売上データや店舗周辺状況のデータ、競合店舗のデータなどさまざまな視点から情報を収集し、計算に活かすことが大切です。以下では、小売業(スーパーマーケット)を例に計算方法を解説します。


過去の実績をもとに計算する方法

過去の売上データに売上成長率をかけ合わせて売上予測を計算します。
たとえば、9月の売上予測を算出したい場合、過去の9月の売上に年間成長率をかけて算出します。
一昨年9月の売上が2,000万円、昨年9月の売上が2,200万円の場合の計算例は以下の通りです。
まず、売上成長率は(2,200万円−2,000万円)÷2,000万円×100=10%になります。
今年も昨年と同じ成長率が見込まれるとすると、9月の売上予測は2,200万円+(2,200万円×10%)=2,420万円です。
実際の成長率については、去年と今年の営業状況の変化により数値が異なる可能性があります。


営業パイプラインから予測する方法

スーパーマーケットの売上予測における営業パイプラインからの予測法は、その効果的な手法とされています。まず、各フェーズを明確にします。

  • 顧客接触: 店頭でのデモンストレーションやサンプリングで商品を紹介
  • 商品案内: 商品の特徴や価格などを説明し、顧客の購買意欲を喚起
  • 提案: 割引やキャンペーン情報などを提供し、購買決定を促進
  • 購入: 顧客が商品をカートに入れ、レジで決済

次に、過去のデータから各フェーズの通過率(コンバージョン率)を求めます。例えば、100人の顧客接触から商品案内まで辿り着くのが20人であれば、そのコンバージョン率は20%とします。これを各フェーズごとに計算し、最終的な売上を予測します。


商談ステージに基づいて予測する方法

商談ステージに基づいた売上予測とは、商談の進行度ごとの成約確率(受注確度)を使って計算する方法です。
商談ステージに基づいて予測する方法は、スーパーなどの小売業での売上予測にも効果的に活用できます。この方法は、商品のライフサイクルや顧客との関係性を各段階に分け、それぞれでの成約確率を設定し、売上高を予測します。

例えば、商品のライフサイクルを「新商品導入」「定着期」「斜陽期」の3段階、顧客との関係性を「新規顧客」「リピート顧客」「ロイヤル顧客」の3段階と設定します。

次に、それぞれの段階での成約(購入)確率を過去の販売データや市場調査に基づいて設定します。例えば、新商品導入期では購入確率が10%、新規顧客の購入確率が20%と設定することができます。

このように、各段階ごとの購入確率を元に、その商品や顧客に対する売上予測を計算します。例えば、「新商品導入」期にある商品が50アイテムで、アイテムあたりの見込み売上が3000円の場合、売上予測は10%50アイテム3000円=15万円となります。これを各段階ごとに計算し、全体を合計することで、スーパーの売上予測額を得ることが可能です。
商談ステージに基づく予測は、顧客別に売上予測を算出できる点がメリットです。


テスト市場の分析結果から予測する方法

スーパーなど小売業の売上予測においても、テスト市場の分析結果からの予測が有効です。新商品の導入や新しいプロモーション手法を試す際、まずは限られた店舗で実施します。その際の売上や顧客からの反応を分析し、全店舗への展開時の売上を予測します。

具体的な計算手順は以下の通りです。

  1. テスト市場(店舗)での売上を計算
  2. 全店舗数を把握
  3. テスト市場での売上比率を全店舗数に適用

例えば、テスト市場で1000万円の売上があり、全店舗数が100店舗だとしたとき、全店舗での売上予測は1000万円×100=100億円となります。

ただし、この方法ではテスト市場と全店舗の傾向が同じであることが前提となります。地域や顧客層による違いがある場合は、適切な補正を行う必要があります。

他にも、競合店舗の状況や周辺環境、季節性、宣伝・販促活動など、テスト市場で考慮されていない要因も考慮に入れることで、売上予測の精度向上につながります。


定番の経験モデルや分析手法から予測する方法

代表的な手法に「ハフモデル」と「重回帰分析」があります。
ハフモデルは、顧客が特定店舗で購入する確率を、店舗面積や品揃え、競合店舗との距離関係などから予測する手法です。
重回帰分析は、売り場面積や従業員の数など店舗や競合に関する細かい要素が、顧客の行動にどう結びついているかを分析する手法です。
これら2つの手法によって分析を加味することで予測値の精度を高め、マーケティング戦略や店舗運営方法をブラッシュアップしていきます。


売上予測の精度を高めるポイント

会議をする様子

売上予測の立て方と計算方法を理解したら、計算結果の精度を高くするためのポイントを押さえることが大切です。
主に以下のポイントに気を付けて計算することをおすすめします。

  • 前提となる市場や販売方法を特定する
  • 正確な販売実績データを収集する
  • 影響を与える要因を把握する
  • 社員一人ひとりがコスト意識を持つ
  • 情報共有のしくみを整える
  • 数か月先など長期的な売上予測を立てる

以下では、上記6つのポイントを詳しく解説します。


前提となる市場や販売方法を特定する

まずは、前提となる市場や販売方法を特定してから売上予測を立てましょう。
売上は、市場の特徴や販売方法によって大きく変動します。特に、新たな市場やこれまでとは違う販売方法を試すのか、それとも既存の市場や販売方法で着実な成長を目指すかについては明確に決めておくことが大切です。
たとえば、新たな市場や販売方法に挑戦するなら、周辺地域の特徴や競合店舗の状況、潜在的ニーズなどのデータを収集し、それらを基に売上予測を計算します。
一方、既存市場の場合は、過去の実績や現在のトレンドを分析すると効果的です。
こうした前提がはっきりしていないと、売上予想の精度が低くなってしまうので気を付けましょう。


正確な販売実績データを収集する

売上予測を立てるにあたっては、詳細かつ正確な販売実績データがとても重要です。
データが不正確だったり抜け落ち箇所が多かったりすると、売上予測の計算方法が正しくても、計算結果が不適当か、極端に偏った結果になるおそれがあります。
したがって、販売実績データは日頃からきちんと管理することが大切です。
データの管理には、ExcelやCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)、MAツール(マーケティング自動化ツール)といったツールを活用すると、適切かつ楽に管理しやすくなります。


影響を与える要因を把握する

売上に影響を与える要因を把握し、予測に反映させることも重要です。
売上に影響を与える要因は、「自社でコントロールできる内部要因」と「自社でコントロールできない外部要因」に分けられます。
内部要因は、自社の販売方法の変更、担当者の離職、スタッフの増減などが代表的な例です。
外部要因としては、競合他社の状況、国内外の景気動向や経済状況、法改正などが挙げられます。
こうした要因を予測に反映させた結果、売上に大きな影響が生じるようであれば、マーケティング戦略を練り直す必要も出てきます。


社員1人ひとりがコスト意識を持つ

売上予測の精度を高めるためには、社員一人ひとりがコスト意識を持ってマーケティングに関わることが大切です。
営業スタッフの中に一人でもコストに対する意識が甘い人がいると、安易な値下げやコスト増に走り、正確な売上予測ができなくなるおそれがあります。
コスト意識をしっかり持つことは、安易な値下げなどに走るのを防ぐだけでなく、顧客間の公平性を保ったマーケティングにもつながります。
したがって、チーム間で売上予測の目的を明確化して共有し、社員一人ひとりが共通のコスト意識を持っておくようにしましょう。


情報共有のしくみを整える

売上予測では、チームの社員一人ひとりに営業データを共有して、効率的に予測を行う必要があります。
データの共有にあたっては、チーム内のスケジュールや売上実績を全員がリアルタイムで把握できるしくみを整えましょう。
特に、営業マネージャーが営業活動まで兼務している場合、限られた時間の中で売上予測を行わなければならないため、情報の一元化が大切です。
また、自社の経営状況や国内外の景気動向、法改正など、売上に影響しそうな要因が生じたら、その都度チームで共有し、把握できるようにしておきましょう。


数か月先など長期的な売上予測を立てる

売上予測では、直近の月など短期的な予測だけでなく、数か月先など長期的な予測も立てておきましょう。なぜなら、先々の予測まで立てておけば、今後予想できる出来事に対して、対応するための準備期間を設けられるからです。
たとえば、顧客の消費活動に影響する出来事が起こりそうな時期は、早めに生産や流通コストを抑えるなどして対応ができます。
また、数か月先の売上予測を立てることで、自社の中長期的な事業戦略も立てやすくなります。


売上予測にはエリアマーケティングの知識が役立つ

売上予測における重要な視点の一つに、エリアマーケティングの知識があります。これは、各地域の市場動向、消費者行動、競合状況などのエリア特有の情報を深く理解することで、より精度の高い売上予測が可能となるからです。

例えば、同じ商品でも東京と地方では消費者の需要や好みが大きく異なることがあります。これらエリアごとの傾向を把握し、マーケティング戦略に反映させることで、具体的な売上予測値へと繋げることができます。

また、エリアごとの競合状況も売上予測に大きく影響します。競合他社の動向を見ることで、そのエリアでの自社製品の売上見込みを立てることも可能です。

これらを踏まえ、エリアマーケティングの知識を活用した売上予測は、企業の戦略立案において非常に有益なものとなるでしょう。


エリアマーケティングならエリアインテグレーションにお任せください

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まとめ

売上予測は、マーケティング全体の方向性を決めるための大事なスタートラインです。
できるだけ正確な売上予測を立てられるかどうかが、エリアマーケティングの成功を左右すると言っても過言ではありません。

しかし一方で、売上予測は飽くまで予測に過ぎず、物事が予測通りに進まないことは世の常です。しかも、エリアマーケティング全体からみれば、売上予測はその一部に過ぎないと言うことを、しっかり理解しておくことが肝要です。
予測の精度アップに気を取られ、重箱の隅を突き回すような無駄な努力は、可能なかぎり避けるべきでしょう。
本稿は、無駄の無い売上予測のための手引きとご理解ください。