商圏分析とは?目的や活用例・やり方など徹底解説
商圏分析は、企業が新規開拓する場合や既存店舗を売上拡大させたい場合だけでなく、広告戦略やマーケティングにも欠かせません。しかし、なぜ商圏分析が重要なのか、実施するメリットやどのような分析をすれば良いか分からない企業担当者様も多いのではないでしょうか。
今回は、商圏分析をする目的や手順やメリット・効果的なポイントなどを徹底解説します。自社が商圏分析を行うメリットがあるのか知りたい事業担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.商圏分析とは
- 2.商圏分析を実施する目的と活用シーン
- 2.1.エリアマーケティングに役立つ
- 2.2.新規出店・店舗開発
- 2.3.チラシ、DM、Web広告などの販売促進
- 2.4.営業戦略の立案
- 3.商圏分析で分かること
- 4.商圏分析のやり方〜実施手順〜
- 4.1.①分析したい商圏を決める
- 4.2.②指定したエリアの統計情報などを収集する
- 4.3.③自店の顧客データと組み合わせて分析する
- 4.4.④競合調査
- 4.5.⑤販促結果を元に、PDCAを回す
- 5.商圏分析の活用例
- 6.商圏分析を実施するメリット
- 6.1.潜在顧客の見える化で費用対効果アップが期待できる
- 6.2.エリア別の顧客分析による自社の強みが理解できる
- 6.3.エリア属性に適したチラシ・キャンペーン内容を展開できる
- 6.4.広告のPDCAを回す際の指標になる
- 7.商圏分析が出来る無料ツール
- 8.商圏分析を実施する際のポイント
- 8.1.仮説を持った分析の実施
- 8.2.商圏以外のデータも活用する
- 8.3.継続して行いPDCAを回す
- 9.商圏分析に詳しい人材がいなければ外注がおすすめ
- 10.商圏分析ならエリアインテグレーションにご相談ください
- 11.まとめ
商圏分析とは
商圏分析とは、店舗拡大や顧客分析などのマーケティング戦略を目的として、商圏内に居住・訪問する人の属性や嗜好などのデータを収集し分析することです。商圏とは、ビジネス展開をする時にターゲットの来店が見込まれる顧客が暮らす範囲を指します。商圏の範囲は、出店予定地や既存店舗を中心とした半径で表すことが多いです。
商圏の状況は日々変わるため、現状把握が出来ないままマーケティング施策を決定してしまうと、戦略ミスにより経営が傾く原因になりかねません。商圏分析を行うことは、企業の販売・営業・宣伝などの戦略上重要になります。
商圏分析を実施する目的と活用シーン
商圏分析を実施する目的と活用シーンは、下記のとおりです。
- エリアマーケティングに役立つ
- 新規出店・店舗開発
- チラシ、DM、Web広告などの販売促進
- 営業戦略の立案
一つずつ詳しく解説します。
エリアマーケティングに役立つ
エリアマーケティングとは、地域により異なる特性を分析してエリアに特化したアプローチを行うマーケティング手法です。エリアマーケティングを行い、地域特性を理解することで自社の商品やサービスの魅力をダイレクトに訴求でき、競合他社に勝つための施策を考えられます。
エリアマーケティングについてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご確認ください。
関連記事:エリアマーケティングとは?分析手法や手順、ポイントなど解説
新規出店・店舗開発
商圏分析することで、新規出店・店舗開発のための立地分析や退店分析、既存店分析・競合店分析などの戦略を練られます。当該地域の特徴と自社商品・サービスの特徴・ターゲット層などを照らし合わせることで、最適な出店地を選べるでしょう。
また、商圏分析ツールを使うことで、候補物件周辺の人口や世帯数などを集計し、簡単に商圏調査が出来るようになります。
チラシ、DM、Web広告などの販売促進
商圏分析により、チラシやDM・Web広告などの販売促進をすべきエリアを把握できます。商圏分析は、人口や世帯数などの分布やターゲット層の動向を可視化します。属性がある程度把握できれば、販売促進エリアを絞り込めるためチラシ・DM・Web広告なども有効になるでしょう。商圏分析を行わないで販売促進をしても効果が薄く、無駄なコストになってしまう可能性が高いです。
営業戦略の立案
商圏分析を行い、自社の商品やサービスの需要が見込めるエリアかどうかを把握できれば、どのような営業戦略を立てれば良いか計画しやすくなります。また、商圏の状況は日々変わるため、売上が下がる場合もあるでしょう。商圏エリアの強みや特徴を知ることで、既存店舗の企画や営業戦略の見直しがしやすく、ターゲットに合わせた商品やサービスへの切り替えに役立ちます。
商圏分析で分かること
商圏分析を行う際のツールにより異なりますが、主に下記のようなことが分かると言われています。
- 人口・世帯
- 世帯特性
- 年収特性
- 掛け合わせデータ
一つずつ詳しく解説します。
人口・世帯
人口・世帯データは、商圏エリア内の居住者全体を俯瞰するために必要なデータです。人口特性は総務省の国勢調査などを元にしています。国勢調査は、日本に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査です。国勢調査の統計データは、国や地方公共団体の政治・行政のみならず、民間企業や研究機関でも広く利用されています。
世帯特性
世帯特性は、世帯の構成比が分かるデータです。たとえば、学習塾などの子ども向けサービスで出店地の計画をしている場合など、候補になりそうな特性を持つエリアを比較する時に役立ちます。世帯特性では、主に下記のようなことが分かります。
- 人員別世帯比率(一人世帯・二人世帯・三人世帯・四人世帯・五人以上世帯)
- 一人世帯内訳
- 所有関係別世帯比率(持ち家世帯・借家世帯)
- 建て方別世帯比率(一戸建て世帯・共同住宅世帯)
- 共同住宅世帯比率内訳
年収特性
一般的な商圏分析ソフトでは、商圏エリア内の一世帯当たりの年収特性が分かります。具体的には、下記のような内容です。
- 1世帯当たりの年収高
- 推定年収階級別世帯数
- 住宅所有関係別 推定年収階級別世帯数
掛け合わせデータ
商圏分析したデータと任意のデータを掛け合わせた特定条件の分析が可能です。たとえば「30〜40歳で年収1,000万円以上」のデータを掛け合わせて商圏分析をすれば、当該条件に当てはまる世帯が商圏内の何処に集中しているかなどが分かります。ある程度条件を絞った分析データは、新規出店や業績改善の際に役立ちます。
商圏分析のやり方〜実施手順〜
商圏分析は、下記の順序で実施します。
- 分析したい商圏を決める
- 指定したエリアの統計情報などを収集する
- 自店の顧客データと組み合わせて分析する
- 競合調査
- 販促結果を元に、PDCAを回す
以下の項目で一つずつ詳しく解説します。
①分析したい商圏を決める
はじめに、分析したい商圏を決めます。商圏分析を実施するエリアを選定する際は、店舗からの距離設定が重要です。たとえば、店舗周辺を広く対象にしたい場合は「店舗を中心に半径10km圏内」などと指定します。一方、店舗周辺近隣の詳細なエリアを対象としたい場合は「店舗を中心に徒歩15分圏内」などと時間の指定をすると良いでしょう。
②指定したエリアの統計情報などを収集する
次に、指定エリアの統計情報を収集し、設定した商圏エリア内の商圏特性を把握しましょう。
商圏分析ツールを使うと、レポートとしてデータを得られます。たとえば、総務省が公開している地理情報システム「jSTAT MAP」は国勢調査データなどを無料で参照できるツールです。
エリアマーケティングツールに関して、詳しくは以下のページで紹介しています。
関連記事:エリアマーケティングツール11選!選び方や最適な活用方法も解説
③自店の顧客データと組み合わせて分析する
三つ目に、自店の顧客データと組み合わせて分析を実施します。レポートのデータだけではなく、自社の顧客データと組み合わせた分析も有効です。稀に、自社の顧客データを地図に落とすと商圏エリア内にも拘らず、集客できないエリアが明確になります。そのような場合は、大きな川や鉄道があり橋を渡る必要があるなど、顧客データと商圏分析データを組み合わせることでどのような販売促進をするべきかが浮き彫りになるでしょう。
④競合調査
自社の顧客データと商圏分析データを組み合わせると、競合調査も可能です。たとえば、商圏エリアの競合店舗数を把握し、1店舗あたりの人口を割り出して利益を生み出せそうかなどを検討します。また、競合店の立地や規模・営業時間や販促方法などを分析して、新規出店後の販売戦略の立案や既存店の売上改善などに活用できるでしょう。
⑤販促結果を元に、PDCAを回す
最後に、ここまでの商圏分析を元にして、地域特性に合わせた販売戦略や営業戦略を策定します。地域にどのような販促を展開するか決めた上で、実施後に問い合わせなどがあった時のために、顧客の住所などのデータを記録しましょう。顧客から反響があったのかをデータ化しておくことで、次の販促策や改善策につなげられます。PDCAを何度も繰り返し、売上アップを目指しましょう。
商圏分析の活用例
商圏分析は、企業のマーケティング活動においてさまざまな場面で活用できる手法です。商圏分析を活用することで、売上アップや顧客満足度の向上を図ることができます。
では実際に商圏分析はどのような場面で活用できるのでしょうか。商圏分析の活用事例として飲食店・塾・コンビニでの具体例をご紹介します。
飲食店
飲食店の商圏エリアは、利用者の移動手段や居住地域・動線を意識し、利用者がストレスなく来店できる範囲で設定しています。そのため、移動時間が長いと利用頻度が低下する可能性が高くなります。
具体的には、商圏範囲は都心部であれば半径500m程度、郊外であれば3km程度です。また、飲食店の商圏エリアを決める時にはデータの数値だけではなく、地理的なポイントや視認性・コンセプトなども意識することが大切です。具体的には、下記のような内容です。
- 自社商圏の分断要因がないか確認する(例:線路や河川、幹線道路などが商圏範囲を横切っている場合)
- 物件や店舗看板の視認性を確認する(実際に現地へ行って確認推奨)
- 商圏の特性と店舗のコンセプトを比較する
塾
地図上では、ターゲットの学生たちが住む場所は把握できません。しかし、商圏分析を行えば、多くの学生が住んでいるのに学習塾が少ないエリアが見つかる可能性が出てきます。多くの学生が住んでいるエリアを見つけ、そのエリアで学習塾を開業すれば、効果的に顧客獲得が可能です。加えて、ターゲット層の多いエリアで顧客獲得ができれば、顧客の友達や家族間で口コミが広がり、集客活動を行わずに新たな顧客を獲得できる可能性が高まり、コスト削減につながるでしょう。
塾のマーケティングにはエリアマーケティングを用いたポスティング販促が有効です。詳しくは以下のページをご覧ください。
関連記事:塾の集客にはポスティングが有効!注意点を知り適切な方法で実施しよう
コンビニ
地域にもよりますが、コンビニの商圏範囲は徒歩10分以内で店舗に来店できる半径500m程度と言われています。商圏分析を行う際には、下記のような点が重要です。
人の動き(例:ビジネス街か住宅街かによって、人の動きが異なる)
地域の家族構成(例:家族世帯が多いのか、一人暮らし世帯が多いのか)
深夜営業の必要性(深夜の利用者が極端に少ない地域の場合、売上よりも営業コストが上回る可能性あり)
商圏分析を実施するメリット
商圏分析は主に新規出店時のエリア分析ツールとして活用されていますが、出店後でも実施できます。具体的には、下記のようなメリットがあります。
- 潜在顧客の見える化で費用対効果アップが期待できる
- エリア別の顧客分析による自社の強みが理解できる
- エリア属性に適したチラシ・キャンペーン内容を展開できる
- 広告のPDCAを回す際の指標になる
一つずつ詳しく解説します。
潜在顧客の見える化で費用対効果アップが期待できる
商圏分析をすることで、潜在顧客やターゲット顧客を可視化できるため、費用対効果アップが期待できます。たとえば、ポスティングチラシやWeb広告を実施する際、闇雲に店舗の周辺エリアで展開するのではなく、ターゲット層が居住するエリアに集中できます。広告費や販促費をできる限り抑えつつ反響率をアップさせたい企業は、商圏分析でターゲットのいるエリアを見直すことも手段の一つです。
エリア別の顧客分析による自社の強みが理解できる
商圏分析データと自社の顧客情報を突き合わせることで、エリア別の顧客分析による自社の強みを理解できます。具体的には自社が強いエリアや年代・狙うべき顧客の他に、強みとする部分・課題を可視化することが可能です。また、複数の店舗があれば、商圏ごとに売上分析を行うことで、より具体的に強みや課題が明確になります。
エリア属性に適したチラシ・キャンペーン内容を展開できる
商圏分析をすることで、エリア属性に適したチラシ・キャンペーン内容を展開できます。たとえば、一人暮らし世帯が多いエリアに家族世帯向けのチラシや広告を展開しても、思うような効果が出ない可能性が高いです。しかし、商圏エリアによってどのようなことにお金を使う傾向があるのか分析結果を得ることで、属性に応じた販促手段を考えられるでしょう。
広告のPDCAを回す際の指標になる
商圏分析は、広告のPDCAを回す際の指標となります。商圏分析を実施して得たレポートは、販促手段の結果の良し悪しを判断する有力なデータです。データを元にして商圏エリアを定めてターゲット層に合わせた販促手段を行えば、次回の販促がより有効となるでしょう。
商圏分析が出来る無料ツール
自社で商圏分析を行う場合、分析やレポート作成のために多くの時間や手間を費やしてしまいます。商圏分析が出来る無料ツールを使えば、分析やレポート作成にかかる時間や手間を効率化できます。以下では、商圏分析が出来る無料ツール「RESAS」と「jSTAT MAP」について解説します。
RESAS
RESAS(リーサス)は、地域経済に関するさまざまなビッグデータ(産業の強み・人の流れ・人口動態など)を地図やグラフで分かりやすく可視化したシステムです。地域経済分析システム(Regional Economy Society Analyzing System)の頭文字を取っています。
- 産業データ:産業の構成、雇用・売上で地域を支える産業など
- 地域経済循環マップ:自治体の生産・分配・支出におけるお金の流れなど
- 農林水産業マップ:農林水産業の販売金額の割合・経営者の年齢など
- 観光マップ:人の流れや、インバウンド観光の動向など
- 人口マップ:人口推計・推移、人口ピラミッド、転入転出など
- 消費マップ:卸・小売の状況、飲食料品等のPOSデータなど
- 自治体比較マップ:各種指標についてほかの自治体との比較
インターネットが使えればどなたでも利用可能で、データに基づいた地域の実情を把握・分析できます。
jSTAT MAP
jSTAT MAP(ジェイスタットマップ)は、統計地図の作成や利用者のニーズに沿った地域分析が出来るオンラインサービスです。国が公表している統計データを使用し、統計地図を作成するほかに、利用者が持っているデータを使用して地域分析が出来ます。
jSTAT MAPにはさまざまな機能があり、複数の機能を組み合わせるとより高度な分析も可能です。
- プロット作成機能:地図上に特定の地点を登録する機能
- エリア作成機能:地図上に特定のエリアを登録する機能
- 統計グラフ作成機能:地図上に統計データを表示する機能
- レポート作成機能:統計データとグラフを使用したレポートを作成する機能
ソフトをダウンロードする必要がなく、Web上でどなたでも無料で利用できます。
商圏分析を実施する際のポイント
商圏分析を実施する際には、いくつかのポイントがあります。
- 仮説を持った分析の実施
- 商圏以外のデータも活用する
- 継続して行いPDCAを回す
一つずつ詳しく解説します。
仮説を持った分析の実施
商圏分析を実施する時は、闇雲にデータを取得・羅列するのではなく、仮説を持った分析をしましょう。「なぜ商圏が広がり店舗の売上が高くなったのか」などの仮説を立て、仮説を検証する商圏データを使用できれば、効果的な商圏分析が出来ます。
商圏以外のデータも活用する
商圏分析を行う際に、商圏以外のデータも活用すると本質的な分析が可能になります。たとえば、立地データ(交通量・歩行量・視認性など)や店舗データ(坪数・席数・店舗間口など)が該当します。商圏分析を実施する場合は、全てを商圏データとして結論付けないようにしましょう。
継続して行いPDCAを回す
商圏分析の効果を高めるには、商圏分析を継続しPDCAを回すことが重要です。PDCAのサイクルを回し続けることで、実行すべき内容が明らかになります。商圏エリアの状況は日々変化するため、PDCAを短いサイクルで回すことで戦略の精度が高まるでしょう。
商圏分析に詳しい人材がいなければ外注がおすすめ
商圏分析に詳しい人材がいない場合は、外注がおすすめです。外注する場合のメリットとデメリットについて下の表でまとめています。
メリット |
デメリット |
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商圏分析ならエリアインテグレーションにご相談ください
商圏分析の外注でお悩みの方は、エリアインテグレーションにご相談ください。エリアインテグレーションは、豊富なノウハウと確かな実績でエリアマーケティングの課題に応えるエリアマーケティングのプロ集団です。
組合名 |
有限責任事業組合 エリアインテグレーション 英語名: Area Integration LLP |
所在地 |
〒105-0004 |
事業内容 |
ポスティングや新聞折込など、エリアマーケティングに活用可能な広告メディアの専門代理業 |
設立 |
2010年2月1日 |
出資金 |
8,000万円 |
代表職務執行者 |
株式会社電通プロモーションエグゼ |
エリアマーケティングに関わる業務をワンストップでサポート
エリアインテグレーションは、GIS(地理情報システム)を活用した商圏分析とエリアマーケティングにより、ターゲットに効率的に情報が届くエリアの分析が可能です。適切な媒体の組み合わせを検討した上で、販促プランを立案します。
また、販促のターゲットや目的・予算に対して、どのような商圏エリアに配布するのが効果的かを考え、配布エリアを立案することも可能です。エリアインテグレーションは、店舗の商圏分析・競合店の調査・エリア販促プロモーションのプランニングや実施などワンストップでサポート致します。
まとめ
商圏分析は、エリアマーケティングを実施する上で、店舗のターゲットに対して販促活動を展開するために有効です。ポイントを押さえた商圏分析を行うことで、商圏エリアにおける新規出店や店舗開発・既存店舗の分析や競合店舗分析などがわかり、効果的なマーケティング戦略ができるでしょう。
自社に商圏分析に詳しい人材がいなければ外注がおすすめです。自社で商圏分析を行うメリットがあるのか詳しく知りたい事業担当者の方は、ぜひ一度エリアインテグレーションにご相談ください。